株式会社YEデジタル マーケティングリーダー  森山藍様インタビュー/シリコンバレー的思考と働き方から考える新規事業立ち上げ〜

株式会社YEデジタル マーケティングリーダー 森山藍様インタビュー/シリコンバレー的思考と働き方から考える新規事業立ち上げ〜

今年の1月上旬、例年通りアメリカのラスベガスにてビジネスカンファレンスのCESが行われ、日本からも多くの企業が最先端のテクノロジーや現地のマインドセットを学ぶためにアメリカを訪問しました。CESに合わせてシリコンバレーを訪れる、という旅程を組み立てる企業も多く、弊社スカイライトアメリカ(以下、スカイライト)も同時期多くの訪問企業を迎えていたのですが、株式会社YEデジタル様(以下、YEデジタル)にも弊社をご訪問いただき、約2時間のビジネスセッションを行わせていただきました。

 YEデジタル様とは以前より現地でご縁があることもあり、今回の多忙な訪米スケジュールの中でスカイライトを訪問いただきましたが、そのご好意から滞在に関する多くのお話を事後インタビュー含めて、同社のマーケティング本部事業推進部担当課長である森山藍様(以下敬称略)に伺わせていただくことができました。森山さんはついこの間までシリコンバレーの駐在員でもあったのですが、本稿ではシリコンバレー駐在時期に体感した新規事業の難しさや向き合い方、そしてセッションの感想などをお届けしたいと思います。

ーシリコンバレーに駐在となった経緯を教えてください。

もともとプログラマーとして、製造業を対象に基幹システムの導入・構築・運用支援を行うYEデジタル(旧安川情報システム(株)) に入社しました。約10年間ウェブのアプリケーション開発などを行い、システムエンジニアとして勤務。当初はお客様からの請負開発業務に携わっていましたが、自社製品をつくる企画が立ち上がった際に、製品企画や実装を行うために参画しました。

自社製品の完成後、拡販や広報などを行うマーケティング部門が当時なかったため、自身がマーケティング部の創設に携わったそうです。ちょうどその時期に、会社内部の事業改革の流れでシリコンバレーにつながりのある方が社長に就任されたことをきっかけに、海外駐在事務所を立ち上げることになり、自身が選出されてシリコンバレーで2017年から2021年の約3年半を過ごしました。

シリコンバレー駐在事務所では、地元のスタートアップへの投資や、技術協業をする際の本社側との橋渡しを主に行っており、その他にも完成した製品のベイエリアでのセールスにも力を入れていました。

ーシリコンバレーでの海外駐在事務所の立ち上げでは、どのようなハードルを超える必要がありましたか?

初めは私ひとりの事務所から始まり、ローカルスタッフとの関係作りや、オフィス契約、全てにおいてゼロから作り上げる必要があり、文化の違いや言葉の壁など、さまざまな場面で苦労しました。

少人数で効率的にオフィスを回すため、タスクを複雑化せず、シンプルに相手に伝えることを意識していました。また日本にいた頃は、自身の置かれた立場や責任の範囲内での小さな決断はありましたが、シリコンバレーでは大きな決断をする必要が出てきた所も自身の大きな変化に繋がったと思います。この様な経験が糧になったのか、帰国した際に周りの方から性格がより前向きになったというコメントを多くいただく事がありました。

その他にも、会社ウェブサイトの立ち上げ、米国での製品の売買、販売に関する契約書等々、様々な面でゼロから1を作ることの難しさを体験したり、性格や自身のビジネススタイルが変わったことから、シリコンバレーで行っていることが日本側に伝わらない、など日本にいたときには経験し得なかった、もどかしさを感じる瞬間もありました。

ー今年度もYEデジタルからシリコンバレーへの団体訪問がありましたが、やはり過去の自身の体験からシリコンバレーを訪問先として選ばれましたか?

そうですね。ソフトウェアの会社として現地で最先端に触れるところを重視し訪問先を選択しました。初めにラスベガスで開催されたCES(消費者向けテクノロジーを主に世界中の最先端技術が一同に集合する展示会)へ参加しました。CESでは、製品の説明やセールスではなく、製品の良さを伝えるところ、顧客に価値を体験させることにフォーカスしている点など、日本の展示とは違うポイントに気づいたメンバーが多くいたと思います。

その後、ラスベガスからシリコンバレーへ移動したのですが、そちらでは地元に拠点を置く企業への訪問。スカイライトアメリカによる「アメリカと日本の違い」を切り口とした新たな事業創造や経済復興をともに考えるセッションに参加しました。このセッションを一番最後に実施したことで、旅全体の振り返りをする良い機会になったと感じています。

株式会社YEデジタル マーケティングリーダー 森山藍様インタビュー/シリコンバレー的思考と働き方から考える新規事業立ち上げ〜

ーセッション参加者からは、どのような反応がありましたでしょうか。

米国訪問後にアンケートを取ったところ、スカイライトさんに実施して頂いたセッションについてのコメントが一番多かったです。今回参加した社員は、技術、営業、マーケティングまで幅広い職種の方がいましたが、営業の方からは「勝負の本質」に気づかされたというコメントや、これまで顧客ニーズファーストの意識が薄れていたことに気づいたというコメントがありました。

プログラムの冒頭で、チーム対抗のゲームを取り入れたグループワークをしていただいたと思うのですが、このグループワークを通して自分の得意としている領域が分かった社員もいたようです。率先してアイデアを出すよりも、実際にアクションを起こす時に人を回すことの方が得意だと再発見したようですね。

株式会社YEデジタル マーケティングリーダー 森山藍様インタビュー/シリコンバレー的思考と働き方から考える新規事業立ち上げ〜

また終盤あたりで紹介していただいた「6つのハット(Six Thinking Hats) 」というのは、あるテーマについて6つの視点で考える(客観・直感・否定・肯定・創造・俯瞰)発想法だと思いますが、この考え方を初めて聞いた社員も多かったようで、実際に日本でも積極的に活用していきたいという声も寄せられていました。

ー新規事業の難しさを日々感じながらも積極的に考える社員の皆様の様子がありましたが、森山様個人の新規事業に関する今後のビジョンはありますでしょうか。

シリコンバレーから日本に戻ってからは、既製品の市場拡大やマーケティングを行っておりますが、やはり過去経験した製品開発・企画の経験とシリコンバレーで学んだエコシステムの作り方を活かし、社会課題を解決するサービスを展開していきたいと考えています。特にYEデジタルが「家族に自慢できる会社」をモットーにしていることから、社会に貢献するためのサービスの一つとして環境に配慮した脱炭素社会に向けたプロダクトを今後作りだしたいと考えています。

革新的な技術やアイディアだけでなく、既存製品と何かの組合せで新しい価値や革新的なことは生まれると考えていますので、企業として初めてのもの、初めてのことにチャレンジしていくことが一番難しくもあり重要なのではと思っております。諦めずアイディアを生み出し続ける事が新規事業の始まりだと考えています。